歌手生活25周年を迎えた"ご当地ソングの女王"水森かおりの魅力を特集番組で紹介

2020.09.23児玉澄子

 哀愁ただよう歌声とスケール感あふれる歌唱で支持される人気演歌歌手・水森かおり。その名を一気に知らしめたのは、2003年の『鳥取砂丘』の大ヒットだった。叙情豊かに表現する"女の一人旅"はご当地にとどまらず多くの演歌ファンの心をつかみ、同年には紅白歌合戦に初出場。以来、17年連続出場中と押しも押されもせぬ人気歌手の1人だ。『鳥取砂丘』のイメージが鮮烈だったためか、同曲をデビュー曲だと思っている人も多いが、実は11枚目のシングル曲。デビューは1995年の『おしろい花』で、2020年は歌手生活25周年の節目の年となる。

 99年の7枚目のシングル『竜飛岬』以来、歌ってきたご当地ソングは43都道府県(残すは千葉、徳島、福岡、宮崎のみ)。津々浦々の土地に寄り添ってきた彼女だが、生まれも育ちも東京の下町。その人柄はしっとりした歌声からは意外なほど(?)、どこまでも気さくで親しみやすい。
 そんな彼女の生の歌唱と素顔のトークが堪能できるのが、「宮本隆治の歌謡ポップス☆一番星」で前編・後編にわたって放送される「水森かおり25周年記念スペシャル」(第2・4木曜、後5:00~6:00)だ。

 9月24日(木)放送の前編では『鳥取砂丘』をはじめ、3枚目のシングル『北夜行』を披露。恋に破れた女が1人、北行きの夜行列車に揺られながら切ない未練を歌うこの楽曲は、自身のお気に入りの1曲であるという。「デビュー当時はこの曲に自分の力が及ばなかった」と振り返る彼女が今どんな歌声を響かせるのか、ぜひ確かめてほしい。さらに前編では特別ゲストに作曲家・弦哲也が登場する。弦哲也といえば、川中美幸の『ふたり酒』や石川さゆりの『天城越え』などの数々の名曲を手掛けてきた日本歌謡史にその名を刻む大ヒットメーカーであり、今年で音楽生活55周年とこちらも節目の年だ。水森とは、カラオケファンに支持されて人気歌手への足がかりをつかんだ10枚目のシングル『東尋坊』から、20年の最新曲『瀬戸内 小豆島』まで、二人三脚とも言える「歌の旅」を歩み続けてきた。そんな2人の掛け合いはチャキチャキに明るい水森に、シャイな笑顔を浮かべながらも穏やかにからかう弦哲也と、まるで父と娘のように微笑ましい。

 しかし2人の絆はやはり音楽で結ばれたもの。番組では弦哲也の爪弾くギターに合わせて、2人がデュエットを披露するスペシャルメドレーも実現! 中でも水森のデビュー10周年を記念して書き下ろしたデュエット曲『幸せの子守唄』は、「歌うのが一番苦手」と弦哲也。大作曲家をそこまで翻弄させるその理由は、なんと「泣いてしまうから」。娘と父親が2人、嫁ぐ前の夜に酒を酌み交わしながら思い出を語り合う情景を歌った暖かくも切ないこの曲は、歌手・水森かおりの才能を大きく花開かせた弦哲也にとっては感慨もひとしおなのだろう。大作曲家は果たして番組でも涙を浮かべるのか? そんな覗き見根性は抜きにしても、2人の歌声が重なり合う貴重な放送はファンならずとも見逃せない。

 続く9月24日(木)後6:00~7:00には「水森かおり特集 ベストヒット演歌」が放送。最新曲『瀬戸内 小豆島』をはじめ、数々のヒット曲のミュージックビデオを通して25年の足跡を振り返る。今や"ご当地ソングの女王"の呼び名を揺るぎないものとしている彼女だが、前述したように生まれも育ちも東京。初めてご当地ソングに向き合ったときには、「縁もゆかりもない自分が歌っていいものだろうか」というためらいもあったことを明かしている。しかしそんな迷いもご当地に足を運び、歌を届けて目の前の人々の喜ぶ顔を目にすることで次第に払拭されていったという。ご当地ソングの舞台のほかでも、初めて訪れる土地については事前にかなりの情報収集をする。華やかなステージで歌うだけではない地道な積み重ねで、津々浦々の人々との絆を大切に築いてきた。それが25周年を迎えた"ご当地ソングの女王"の舞台裏である。

 何より彼女の歌声からは、美しい自然や人々の営み、密やかに忍ぶ女の恋心といった、どこか懐かしい日本の情景が浮かんでくる。令和の時代に失ってしまった何かへの慕情を胸に、人は水森かおりの歌を愛するのかもしれない。ご当地に足を運ぶのもままならない昨今、帰省をためらっている人も多いだろう。そんな2020年に"ご当地ソングの女王"が節目の年を迎えたのも、何かの巡り合わせを感じさせる。水森かおりの歌声は、きっとすべての日本人のまぶたの裏に故郷の情景を映し出してくれるはずだ。

(文=児玉澄子)

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児玉澄子

芸能、音楽ライター。1994年、日本大学芸術学部卒業後よりフリーランスとして活動。インタビューを中心に分析記事なども執筆。

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