ブレイク必至のピアノロックバンド、SHE’Sの魅力を存分に味わう!

2020.07.29秦野邦彦

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旬のアーティストに密着し、制作過程や音楽的ルーツを深掘りしていく『WOWOW PLUS MUSIC -深夜1時の音楽タイム-』。7月からは全4回にわたって、メンバー全員が大阪出身のピアノロックバンド、SHE'Sが登場。全作品のソングライティングを担う井上竜馬(Key/Vo.)が奏でるピアノをセンターに据え、エモーショナルなロックサウンドから珠玉のバラードまで壮大なスケール感が魅力の彼ら。7月1日にリリースした4thアルバム『Tragicomedy』が早くも高い評価を受けるなか、ブレイク必至な4人の知られざる素顔に迫る。

全作品のソングライティングを担う井上竜馬は小学1年からピアノを習い、母親に勧められたELLEGARDENをきっかけに14歳でギターを手にバンド活動を開始。高校卒業後の2011年、“ピアノを取り入れたロックバンドをやりたい”と思い立ち、地元のバンド仲間だった広瀬臣吾(B)、服部栞汰(G)、木村雅人(Dr)を誘ってSHE'Sを結成。バンド名にある「SHE」は、井上が学生時代に出会った同級生の女の子のことだという。直接会話をしたことはなかったが、独特のオーラと透明感を持つ「彼女」はいったい何を考えているのだろうという思いが自身の求めるバンドサウンド像と重なり合い「SHE'S」となったという逸話はSNS全盛の今、とてもロマンティックに感じられる。

ここでピアノとロック/ポップスの関係について軽くおさらいしてみよう。ピアノは弦を響かせて音を出すという意味では弦楽器的であり、ハンマーが弦を叩いて鳴らすという意味では打楽器的要素も備えた楽器である。

ピアノはロックンロールの誕生にも深く関わっている。1950年代、ロックンロールの先駆者として知られるリトル・リチャード、ファッツ・ドミノ、ジェリー・リー・ルイスらはピアノの打楽器的要素を存分に発揮させ人々を熱狂させた。彼らに多大な影響を受けたビートルズも「レット・イット・ビー」(70年)、ジョン・レノン「イマジン」(71年)で全面的に使用。シンガーソングライターが台頭した70年代にはエルトン・ジョン「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」(70年)、キャロル・キング「イッツ・トゥー・レイト」(71年)、ギルバート・オサリバン「アローン・アゲイン」(72年)といった名曲が数多く生まれた。

こうした海外の動きに影響され、日本でも荒井由実「ひこうき雲」(73年)、小坂明子「あなた」(73年)、原田真二「てぃーんずぶるーす」(77年)、八神純子「みずいろの雨」(78年)などポップス史に残る名曲たちが誕生。

その後もオフコース「さよなら」(79年)、五輪真弓「恋人よ」(80年)、西田敏行「もしもピアノが弾けたなら」(81年)、KAN「愛は勝つ」(90年)、坂本龍一「enegy flow」(99年)などのヒット曲がチャートを席巻したが、ロックとピアノの融合という意味で最も貢献したのは何と言ってもX JAPAN「ENDLESS RAIN」(89年)だろう。YOSHIKIの奏でるメジャーキーの美しいバラードはそれまでのバンドの過激なイメージを一転させ、日本の音楽史に燦然と輝く存在となった。

92年生まれのSHE'Sのメンバーたち(服部は93年生まれ)はそうした系譜を踏まえつつ、さらに新しい音楽を生み出そうとする次世代のバンドだ。同じピアノロックバンドでも60、70年代のR&Bを現代のポップスにうまく昇華したのがOfficial髭男dismならば、彼らの原点は2000年代のアメリカのメロコアやエモ。高校時代、メイ(Mae)やコープランド(Copeland)ばかり聴いていたという井上は、「SHE'Sを始めた頃は全部英語詞で暗い曲ばかり書いていたが、日本語詞を使い始めてからどんどん明るくなっていった」と対談企画で語っている。

そうした変化が最も顕著に表れたのが昨年、東京国際工科専門職大学のCMソングに起用された「Dance With Me」(アルバム『Now & Then』収録)だろう。洋楽感溢れる突き抜けたポップさ、そして<自由を選ぶ自由がある 正解なら君が決めればいい>という歌詞が象徴するこのナンバーがバンドの殻を破り、さらに大きく羽ばたく一歩となったことは間違いない。“悲喜劇”と題されたニューアルバム『Tragicomedy』は、任天堂のゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」のCMソング「Letter」や、美しい女性が隠し持つ醜さが暴かれていく様を刺激的に見せるミュージックビデオが話題の「Ugly」など珠玉のナンバーが満載。より深みを増した歌詞に注目

今回オンエアされる『SHE'S TV』では、4人のメンバーが順番にMCを担当、1回目(7月23日)のMCは井上。「誰が一番、井上竜馬を知っているか?」をテーマにパーソナルな部分を掘り下げるクイズや、目隠しをして臭いと感触だけをヒントに回答する「触って答えて」などバラエティー色満載。メンバーの素顔が終始垣間見られる内容になっている。もちろん楽曲の紹介もあり、初回は「Ugly」と「Letter」の2曲。

7月28日には秋に開催を予定している全国ツアーの前哨戦として、初の有料配信ワンマンライブ「SHE'S Broadcast Live ~prelude~」を開催。“聴けば、きっと囚われる。旋律に愛されたバンド”を謳う彼らの魅力を、この番組でぜひ堪能していただきたい。

(文=秦野邦彦)

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秦野邦彦

1968年生まれ。ライター。『テレビブロス』『フィギュア王』『映画秘宝』『スカパー!TVガイド』、音楽ナタリー、OPENERSなどで音楽、映画、テレビ、フィギュア関連記事を寄稿。構成を担当した書籍にPerfume 『Fan Service[TV Bros.]』(東京ニュース通信社)など。

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