ドライブは楽しい。そこに音楽があれば、もっと楽しい

2020.05.01秦野邦彦

憧れの名車と共に素敵な音楽をお届けする「CAR and DRIVE MUSIC」は、車の中で音楽を聴くことが大好きなあなたにぴったりの番組だ。

まず、カーオーディオの歴史をつまびらかにすると、いまからちょうど90年前、1930年に米国のガルビン・コーポレーション(現在のモトローラ)が開発した世界初のカーラジオ Motorola 5T71型に始まる。

日本では48年に帝国電波(現在のクラリオン)が国産カーラジオ1号機、63年に国産カーステレオ1号機を開発。これらは主にアメリカ輸出用として生産されていたが、日本経済の成長とともに自動車の販売台数が急速に増加。1960年代後半にマイカーブームが到来すると国内の自動車保有台数は1000万台を突破。63年に名神高速道路、68年に東名高速道路が全線開通し、全国の至るところで自動車が活躍するようになった。

この頃、小林旭「自動車ショー歌」(64年)、ビートルズの「ドライヴ・マイ・カー」(65年)といった自動車をテーマにした楽曲も数多く生まれ、中でも若者たちに多大な影響を与えたのが72年に日産スカイラインのCMソングに起用された「ケンとメリー~愛と風のように~」。爽やかなハーモニーでポップスファンを魅了した小出博志と東郷昌和の2人によるフォークデュオ、BUZZのデビュー曲である。

ちなみにBUZZは80年代、自身の活動のほか松任谷由実、松田聖子など数多くの楽曲でバックコーラスを担当。「守ってあげたい」「赤いスイートピー」といった誰しも聴いたことのあるヒット曲に彼らが関わっていたことも特筆すべきだろう。

カーオーディオの歴史に話を戻すと、70年代前半までは純正装着はAMチューナーのみ、8トラックカートリッジやFMチューナーはオプション装備が主流だったが、75年にパイオニアが世界初のコンポーネントカーステレオを発売。同社の「ロンサムカーボーイ」シリーズや、クラリオンの「シティコネクション」シリーズに代表される(純正ではない)社外カーオーディオ機器も登場し、車内でいい音を聴きたいドライバーの欲求に答えていく。レコードやFMから録音したカセットテープで好きな音楽を好きな時に聴けるようになったことは、ドライブの楽しさをさらに拡張していくこととなった。

82年に世界初のコンパクトディスク(CD)ソフトが発売され、パイオニアが世界初のカーCDプレーヤーを発売。92年にソニーが光学ディスク記録方式のミニディスク(MD)を発売したことでカーオーディオも急速にデジタル化が進み、カーナビゲーションシステムの普及に伴って現在の液晶タッチパネル式ディスプレイを搭載したオーディオ一体型 2のナビへと集約されていく。現在のストリーミングサービスのプレイリストにはドライブ向きの楽曲をセレクトしたものが数多く用意されているが、80~90年代、お気に入りのナンバーをカセットやMDに録音・編集して、同乗する友人や恋人に聴かせることが楽しみだったドライバーも多いのではないだろうか。

70年代~90年代のヒット曲を中心にお届けする「CAR and DRIVE MUSIC」は、そんなあなたのためのプログラムだ。

5月の放送では「Jeep WRANGLER UNLIMITED SAHARA」が登場。砂地や岩場など足場の悪い場所でも快適に走行できるよう設計された、クライスラーの本格クロスカントリーカーである。

全4回にわたってこの車で走破するのは、茨城県つくばみらい市の谷和原インターチェンジから大洗町、カシマサッカースタジアム、波崎新港を通過し、サーファーの聖地として知られる千葉県一宮町までのマリンルート。今回流れる音楽は、オフコース「Yes-No」(80年)、南佳孝「スローなブギにしてくれ(I want you) 」(81年)、松任谷由実「守ってあげたい」(81年)といった80年代のヒットナンバーたち。昨今の昭和歌謡やシティーポップ人気を裏付ける個性豊かな楽曲たちが彩りを添えてくれる。

せっかくなので、ここで「JEEP編」のプレイリストの中から解説があるといっそう楽しめるものを数曲紹介させていただこう。

♪HOTEL PACIFIC/ブレッド&バター

神奈川県茅ヶ崎市出身の兄弟デュオが81年にリリースした16枚目のシングル。抜群のハーモニー、そして松任谷由実が呉田軽穂名義で提供した歌詞が海を感じさせてくれる。

♪セ・シボン/門あさ美

80年にリリースされた2枚目のアルバム「SACHET(サシェイ)」収録。ヤマハポピュラーソングコンテスト出身の彼女は洗練された音楽性が魅力で、本作も大人の恋をアンニュイに歌ったナンバー。

♪SUMMER SUSPICION/杉山清貴&オメガトライブ

83年リリースのデビューシングル。作詞:康珍化、作編曲:林哲司。解散後、杉山清貴は86年に「さよならのオーシャン」でソロデビュー。ドラムスの廣石恵一は現在クレイジーケンバンドで活躍している。

♪今夜だけDANCE・DANCE・DANCE/中原めいこ

「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」のヒットで知られるシンガーソングライターが82年リリースしたデビューシングル。彼女の持ち味であるラテンの香り漂うノリの良いナンバー。

♪心離れるころ/ハイ・ファイ・セット

グループ名の名付け親は細野晴臣で、荒井由実提供の「卒業写真」でデビュー。抜群のコーラスワークと都会的で洗練されたアレンジで人気を博した。83年リリースとなる、この18枚目のシングルは南佳孝が作曲を担当。

懐かしさでいっぱいになる人もいれば、初めて耳にして感動する人もいるだろう。今回のプログラムで、いち早く初夏の気分を満喫できること間違いなしだ。

(文=秦野邦彦)

cad

秦野邦彦

1968年生まれ。ライター。『テレビブロス』『フィギュア王』『映画秘宝』『スカパー!TVガイド』、音楽ナタリー、OPENERSなどで音楽、映画、テレビ、フィギュア関連記事を寄稿。構成を担当した書籍にPerfume 『Fan Service[TV Bros.]』(東京ニュース通信社)など。

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