「ポスト・アイドル」として生きる“バンもん!”の覚悟

2020.12.08秦野邦彦

深夜1時、それは新たな音楽に出合う時間。歌謡ポップスチャンネルが“今 伝えたい”アーティストに注目し、そのアーティストと共に企画して個性を届けるフリースタイル・プログラム『WOWOW PLUS MUSIC -深夜1時の音楽タイム-』。ジャンルを超えた幅広い顔ぶれが話題を集めるなか、2020年11月〜21年1月は、鈴姫みさこ、恋汐りんご、ななせぐみ、望月みゆ、甘夏ゆず、大桃子サンライズによる6人組ポスト・アイドル、“バンもん!”こと「バンドじゃないもん! MAXX NAKAYOSHI」が登場する。

同枠でオンエアされる『バンもん!のうぉーうぉーPLUS』の第1回目は、今年10月10日に恵比寿ザ・ガーデンホールで開催された「バンもん!八周年記念リクエストアワード 2020~すゑひろがりインフィニティー~」のライブ映像で幕を開ける。“現在を再構築して天地創造しよう”と呼びかける「ゴッドソング」は今年6月にリリースされ、このライブのために行われたファン投票で見事1位を獲得した楽曲。作詞をみさこ、作曲を「THE IDOLM@STER」シリーズなどへの楽曲提供で知られる田中秀和(MONACA)が担当した、大胆不敵かつポップなナンバーだ。

楽曲が終わって画面が切り替わると、スーツを着たみさこがWOWOW PLUSのオフィスを訪れ、制作部長に「番組をください!」と直談判して、持ち込み企画をプレゼンするシーンに。そのまま「ポスト・アイドルって何?」「バンドじゃないの?」と疑問を抱く視聴者にもわかりやすいようにグループの成り立ちが紹介されていく。

2011年、神聖かまってちゃんのドラマーとしても活躍するみさこを中心に「バンドじゃないもん!」を結成。翌12年にメジャーデビュー。その後メンバーの加入と脱退を繰り返し、14年に現在の6人体制に。16年のメジャー再デビュー以降はさまざまなクリエイターとのコラボレーションが話題となり、6作連続シングルチャートTOP10入りとなるスマッシュヒットを連発。メンバー1人1人の個性的なキャラクターに加えて、ライブではギターとショルダーキーボードの“ゆずポン”こと甘夏ゆず、ベースの“みゆちぃ”こと望月みゆ、ドラムのみさこが生演奏を披露するパートも多く、ポテンシャルの高さも話題を呼んだ。

そして2018年11月、グループ名を「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」と改めることを発表。「女の子は自分の好きなことをしているときが一番かわいい」という結成当初から守ってきたポリシーをさらに極めるため、時代と共に進化する「ポスト・アイドル」として生きていくことを宣言した。

では、彼女たちのいう「ポスト・アイドル」とは何か。これは国籍、性別、年齢などの違いを受け入れ、多様な価値観や発想を生かそうという「ダイバーシティー(多様性)」とも繋がってくるテーマでもある。

AKB48やPerfumeのブレイクを機にさまざまな女性アイドルグループが全国各地で次々と誕生し、「アイドル戦国時代」と呼ばれた2010年代は、歌やダンスの上手さ以上にファンが共感できる成長物語や個性の確立が重視された“意識の変革期”でもあった。

全力のライブパフォーマンスと天真爛漫なキャラクターで動員を増やし、14年には女性グループ初となる国立競技場ライブを成功させた「ももいろクローバーZ」。秋葉原発の“萌えきゅんソングを世界にお届け”をテーマに、アニメ、マンガ、ゲームなどの趣味に精通した各メンバーが個性を発揮する「でんぱ組.inc」。さくら学院の派生ユニットとして始動し、“アイドルとメタルの融合”を掲げた活動が日本のみならず海外でも高く評価され、19年には世界最大規模の音楽フェスであるイギリスのグラストンベリーのメインステージに立つ快挙を果たした「BABYMETAL」……。2010年代のアイドルは従来の王道アイドルとは異なるやり方で独自の道を模索し、個々の武器を見つけながら群雄割拠のアイドルシーンを戦ってきた。

そうした結果、年齢、容姿、音楽性など、アイドルに対する偏見や考え方も、この10年で大きく変わったと言えるだろう。昨年の元旦、バンドじゃないもん! MAXX NAKAYOSHIは、公式ホームページに“ポスト・アイドル”と題した投稿をした。

「アイドルに限界はありませんが、人生にはリミットがあります。限られた人生の中で、好きなことをする時間が輝いて映るのは、もちろんメンバーだけの物語ではありません。好きなものを好きということ、なりたい自分になる人生を老若男女問わず肯定して全人類の勇気になれるよう、これからもこの6人でステージに立ち、音楽を通してノーリミットなLOVE&PEACEを世界中に広めていきたいと思います」

現在、福岡、広島、大阪、名古屋、東京、札幌を回る「バンもん!八周年 すゑひろがりツアー」を開催中の彼女たち。『バンもん!のうぉーうぉーPLUS』では、第2回以降もメンバーの素顔や個性が伝わる楽しい企画を用意。この番組を見ればバンもん!のことをもっと好きになれる内容をお届けしていく。

(文=秦野邦彦)

bn

秦野邦彦

1968年生まれ。ライター。『テレビブロス』『フィギュア王』『映画秘宝』『スカパー!TVガイド』、音楽ナタリー、OPENERSなどで音楽、映画、テレビ、フィギュア関連記事を寄稿。構成を担当した書籍にPerfume 『Fan Service[TV Bros.]』(東京ニュース通信社)など。

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