沖縄出身で、いま注目のダンスボーカルグループChuning Candy

2020.11.10秦野邦彦

気がつけば、今年も残すところあとわずか。コロナ禍に見舞われた2020年はエンターテイメント界も未曾有の危機を迎えたが、ここにきて映画『鬼滅の刃』が初動3日間だけで興行収入46億円超の大ヒットを記録するなど、少しずつ日常を取り戻している感覚があるのはとても喜ばしいことだ。

音楽の分野でも配信ライブの盛り上がりや、一発撮りのパフォーマンスを記録するYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」の登場、そしてTikTokをきっかけにムーブメントが広がった瑛人「香水」、日韓合同グローバルオーディションから生まれたNiziU「Make you happy」、小説を音楽にするというコンセプトが新鮮なYOASOBI「夜に駆ける」といった新しいヒットのかたちが見られた。

また、音楽を通じて少しでも元気になろうという呼びかけも各地でおこなわれた。なかでも注目を集めたのが、エイサー(沖縄や奄美群島でお盆の時期に踊られる伝統芸能)や高校野球などスポーツイベントでの応援歌として起用されている「ダイナミック琉球」。同曲は08年、沖縄の伝統的な歌舞劇をベースにした組踊(くみおどり)絵巻『琉球ルネッサンス』のテーマ曲として(平田大一/作詞、イクマあきら/作曲)制作されて以来、県内のみならず高校野球において仙台育英高校が応援歌として使用するなど広く歌い継がれてきた。が、19年の火災で主要な建物が焼失してしまった首里城の再建を支援する応援歌として新たにアレンジ。音楽プロデューサーの武部聡志、ダンスエンターテイナーの仲宗根梨乃といったトップアーティストとともに、ボーカルとダンスを務めたのが今回紹介する沖縄出身のダンスボーカルグループ Chuning Candy(チューニング キャンディー)、略して“チュニキャン”だ。

13年に沖縄のキャッツアイタレントスクール生で結成。グループ名は、「キャンディーのようにいろいろな個性を持つメンバーが「Chuning=調和」して、一体となって音楽を紡ぎだす」ということを表す造語。彼女たちが全国的に注目されたのは、2年連続で九州・沖縄エリア代表として出場した国民的アニメソングカバーコンテスト「愛踊祭」の大舞台。17年の決勝大会では審査員特別賞を獲得し、18年3月にシングル「Dance with me」でメジャーデビュー。キュートでパワフルなパフォーマンスで多くの人々を魅了し、同年末に第60回 日本レコード大賞新人賞を受賞した。

これまで「S.T.L」「Sugar Sugar Sweet」「19 -nineteen-」「STAND UP!!/アイのうた」と5枚のシングルをリリースし、アーティストとしての立ち位置をしっかりと固めてきたチュニキャン。現在のメンバーは、ソフィー、ゆうり、琴音、LILI、愛子の5人。平均年齢18歳の彼女たちはボーカル&ダンススキルの向上はもちろん、ものの考え方や仲間との関係性においても人間的な成長も感じられるようになってきた。今年3月に配信開始したChuning Candyの「ダイナミック琉球」は、カチャーシー(沖縄民謡に合わせて踊られる踊り)や琉球舞踊など沖縄の文化をダンスに取り入れ、自身のルーツを見つめ直した新境地といえる一曲といえよう。

沖縄は歴史的に独特の音楽文化を誇り、「レ」と「ラ」を抜いた琉球音階や、ウチナーグチと呼ばれる沖縄方言による歌詞、アメリカ文化の影響など多彩な表現は時代を超えて愛されてきた。歌謡曲の分野では70年代「学園天国」などが大ヒットしたフィンガー5、90年代には安室奈美恵、MAX、DA PUMP、SPPEDらが一躍スターに。さらにMONGOL800、HY、ORANGE RANGEといったバンドがメジャーへと駆け上がっていった。彼らに共通するのは郷土への深い愛、そしてエンターテイナーとしてプロフェッショナルであること。

その流れを受け継いだChuning Candyがお届けする初の冠レギュラーテレビ番組が『チュニキャンのおおきな話』。第1話ではグループ結成から現在までの足跡をメンバーのトークと貴重な映像で振り返りながら、グループの魅力に迫るイントロダクション回。残念ながらソフィーは体調不良のため欠席だが、真夏の太陽にように明るい4人がそれぞれのパーソナリティーを発揮して、より身近に感じさせてくれる30分のプログラムとなっている。

11月6日初回放送の第2話は、「歌い方を変えたい」など、メンバーが悩みを赤裸々に語るファン必見の回。ビッグバンド GENTLE FOREST JAZZ BANDのアレンジ・演奏による「ダイナミック琉球~GFJB Thundering mix~」の配信もスタートし、ますます追い風に乗って勢いを増すチュニキャンの“いま”を全力で感じよう。Let's Enjoy Dance and Music !!!

(文=秦野邦彦)

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秦野邦彦

1968年生まれ。ライター。『テレビブロス』『フィギュア王』『映画秘宝』『スカパー!TVガイド』、音楽ナタリー、OPENERSなどで音楽、映画、テレビ、フィギュア関連記事を寄稿。構成を担当した書籍にPerfume 『Fan Service[TV Bros.]』(東京ニュース通信社)など。

Chuning Candy

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